とりのうた

listening and writing the song of the "bird"

2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

第1章 SAY YES (5)

僕の“かの女”への信心の篤さが届いたのか、あの公園での儀式から約8ヶ月後、初夏の香りが漂い始めた1992年5月、“かの女”は僕の「付き合って。」というガラスケースを受け取ることになった。僕と“かの女”は、交際をすることになった。僕の願いは成就した。「…

第1章 SAY YES (4)

こうした社会学的な主題は、次のように言い換えることもできる。この「101回目のプロポーズ」というドラマの大ヒットは、1991年当時の人々の中の生成変化するものが、「虚構」というパターン(過去)にアイロニカルに締め出され続けることが常態化した「虚構…

第1章 SAY YES (3)

ドラマがドラマとして成立するには言うまでもなく3つの時間的要素が必要である。「過去」、「現在」、そして「未来」。また、生成変化するものを「過去」へと締め出そうとする運動と、生成変化するものを「過去」から取り戻そうとする運動との闘いの場こそ、…

第1章 SAY YES (2)

建設会社の万年係長である星野達郎は99回のお見合いにことごとく失敗し続けてきた。達郎は深く傷ついていた。見た目も悪い、仕事も冴えない自分自身を卑下していた。それ以上に達郎を苦しめていたのはおそらく自身の誠実さという仮面をつけた臆病さなのだろ…

第1章 SAY YES (1)

愛には愛で感じ合おうよ ガラスケースに並ばないように 何度も言うよ 残さず言うよ 君が溢れてる 津波と漣を隔てる差異は、岸辺に打ち寄せる海水の量の差異だけではない。言うまでもなく、それは質的な差異でもある。憎しみと愛を隔てる差異もまた、しかり。…

はじめに

そのとき、僕は確かに2つに分裂した。僕の心の中の、「あのASKA」と「このASKA」とが。いや、もっと直截的に言ってしまえば、こう言ってもいい。「あの僕」と「この僕」との分裂であった、とも。 そのとき、警察車両の後部座席で、幾重にも重なるガラスケー…